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不動産登記における法人の会社法人等番号提供制度に関するQ&A

2016/05/27

不動産登記における法人の会社法人等番号提供制度について

司法書士会発行

第1 総論

Q1 不動産登記における申請人が法人である場合の添付情報の主な改正内容は、どのようなものか。

A1 「不動産登記令等の一部を改正する政令」(平成27年政令第262号)が平成27年7月1日公布(同年11月2日施行)され、申請人が会社法人等番号を有する法人の場合は、資格証明情報の提供に代えて、当該法人の会社法人等番号を提供しなければならないとされた(令第7条1項1号イ)。また、これに伴い、「不動産登記規則等の一部を改正する省令」(平成27年法務省令第43号)が平成27年9月28日公布(同年11月2日施行)され、会社法人等番号の提供の例外として、作成後1月以内作成後3月以内(令和2年3月30日改正の登記事項証明書の提供を認めることとされた(規則第36条1項、2項)。
 なお、会社法人等番号を有する法人以外の法人については、これまでと同様に作成後3月以内の当該法人の代表者の資格を証する情報を提供しなければならない(令第7条1項1号ロ、令第17条1項)。

Q2 改正前の不動産登記令及び不動産登記規則においては、不動産と法人の管轄が同一である場合(指定登記所を除く。)は、資格証明情報の提供を省略することとされていたが、改正後は、不動産と法人の管轄が同一であるかどうかにかかわらず、会社法人等番号を提供しなければならないのか。

A2 会社法人等番号を有する法人については、そのとおり。不動産登記規則第36条1項及び2項が改正され、同一登記所又は同一登記所に準ずるものとして法務大臣が指定した登記所における添付情報の省略制度が廃止されたので、会社法人等番号の提供を省略することはできない。
 なお、本改正に伴う事務取扱いを定めた平成27年10月23日付け民二第512号民事局長通達により、同一登記所に関する以下の先例が廃止されている。
1 法人の承継または変更を証する情報の提供の省略を定めた昭和38年12月17日付け民甲第3237号法務省民事局長通達
2 登記申請の代理権が消減していない場合における代理権を証する情報の提供の省略を定めた平成5年7月30日付け法務省民三第5320号法務省民事局長通達(ただし、記第2の1に限る。)

Q3 不動産登記において申請人である法人が会社法人等番号を提供した場合、登記官はどのようにして当該法人の代表者の資格を確認するのか。

A3 会社法人等番号により、当該法人の登記情報にアクセスして確認する。

Q4 登記所において、提供された会社法人等番号による法人の登記情報にアクセスした時に、法人登記が登記中である場合は、どのように審査をするのか。

A4 法人登記の完了後に当該不動産登記申請についての審査が行われる。ただし、不動産登記の申請の受付後に法人登記が申請された場合には、原則として、不動産登記の処理には影響しない取扱いである。
 なお、法人登記の完了前に登記事項証明書を添付するという補正は認められ、その場合は提供された登記事項証明書により審査される。

Q5 申請人が規則第36条により、作成後1月以内作成後3月以内(令和2年3月30日改正の登記事項証明書を提供した場合、登記官は当該申請人である法人の代表者の資格をどのように審査するのか。

A5 登記官は、提供された登記事項証明書により審査することになる(Q26参照)。

Q6 「全ての登記所において、登記されている法人の資格証明情報を提供することを要しない」とすることが今回の改正の趣旨であるが、併せて「作成後1月以内の登記事項証明書の添付を認める」こととしたのはどういう理由か。

A6 不動産登記の申請の際に当該法人の法人登記が申請されている場合に、Q4の取扱いによれば長期間不動産登記の処理が完了しないおそれがあり、実務に与える影響が大きいことから、例外が認められたものである。

第2 各論

Ⅰ 会社法人等番号の提供方法

Q7 申請人が法人である場合、会社法人等番号はどのように提供するか。

A7 申請情報の申請人欄に会社法人等番号を記録し、「添付情報欄」に「会社法人等番号」との文言を記録する。
 申請用総合ソフトは、様式が更新され対応済みである。

Q8 会社法人等番号の記載を誤った場合、又は会社法人等番号及び登記事項証明書のいずれも提供しなかった場合はどうなるのか。

A8 補正の対象となる。その場合、補正により新たに提供するのは、会社法人等番号又は作成後1月以内作成後3月以内(令和2年3月30日改正の登記事項証明書のいずれであってもよい。

Q9 第三者の許可等を証する情報を提供する場合において、当該第三者が法人であるときは、当該法人の会社法人等番号はどのように提供するか。

A9 添付情報欄に「同意書(会社法人等番号0000-00-000000)」の振合いで記録する(Q15参照)。

Ⅱ 会社法人等番号の提供制度の適用範囲

Q10 会社法人等番号を提供した場合は、法人の印鑑証明書の添付に代えることができるか。

A10 印鑑証明書については、現行どおり提供を要する。なお、同一登記所(法務大臣が指定した登記所を除く)における添付省略の取扱いも変更はない。

令和2年3月30日からは,法人の代表者の印鑑証明書についても,申請情報に会社法人等番号を記載すれば,提供を省略することができるようになりました。なお,作成後3か月以内の印鑑証明書を提供する場合には,申請情報に会社法人等番号を記載する必要はありません。また,同一登記所(法務大臣が指定した登記所を除く。)における添付省略の取扱いは廃止されました。

Q11 会社法人等番号を提供した場合は、法人の住所証明情報の提供に代えることができるか。

A11 代えることができる(規則第36条第4項)。

Q12 会社法人等番号を提供した場合は、登記名義人である法人の住所変更登記における変更証明情報の提供に代えることができるか。

A12 代えることができる(令第9条、規則第36条4項)。ただし、閉鎖事項については、以下の閉鎖事項証明書の提供に代える場合に限られる(規則第36条第4項ただし書)。
 1 現在の会社法人等番号が記載されている閉鎖事項証明書
 2 会社法人等番号が記載されていない閉鎖事項証明書(商業登記規則第44条1項の規定により閉鎖された登記事項を証明したもの)
 *変更証明情報の提供を省略することができるのは、現在の会社法人等番号で変更事項を確認できるものに限られる(Q37参照)。
 平成24年5月20日(外国会社にあっては平成27年3月1日)以前の法人の登記においては、組織変更や他の登記所の管轄区域内への本店の移転の登記等をする場合には、会社法人等番号が変更されていた。この変更前の会社法人等番号が記録された登記記録に変更事項が記録されているときは、現在の会社法人等番号の提供に加えて、変更事項を確認することができる閉鎖登記事項証明書又は閉鎖登記簿謄本を提供する必要がある。この場合、同一登記所であっても閉鎖登記事項証明書又は閉鎖登記簿謄抄本等の提供を省略することはできない。

Q13 会社法人等番号を提供した場合は、所有権以外の権利等の抹消登記の登記義務者の変更証明情報の提供に代えることができるか。

A13 代えることができる。ただし、閉鎖事項については、Q12と同じ。

Q14 会社法人等番号を提供した場合は、登記名義人である法人の名称変更登記における変更証明情報の提供に代えることができるか。

A14 代えることができる。ただし、閉鎖事項については、Q12と同じ。

Q15 会社法人等番号を提供した場合は、第三者の許可等を証する情報の提供に係る当該第三者の代表者の資格証明情報の提供に代えることができるか。

A15 代えることができる。
 なお、利益相反取引の場合の議事録と併せて提供する当該会社の登記事項証明書の提供に代えることもできる。

Q16 会社法人等番号を提供した場合は、登記名義人である法人の合併による移転登記における合併証明情報に代えることができるか。

A16 代えることができる。ただし、閉鎖事項については、Q12と同じ。

Q17 会社法人等番号を提供した場合は、一般承継人による登記(不動産登記法第62条)における承継を証する情報(合併証明情報)に代えることができるか。

A17 代えることができる。ただし、閉鎖事項については、Q12と同じ。

Q18 日本政策金融公庫が(根)抵当権者となる(根)抵当権設定登記において、法人が債務者である場合、当該法人の会社法人等番号が提供されることにより、非課税証明書としての法人の登記事項証明書の提供に代えることができるか。

A18 代えることができる(平成28年3月31日に登録免許税法施行規則第2条の2が改正、同年4月1日より施行されている)。

Q19 会社の登記が清算結了の登記により閉鎖されている場合において、清算結了前の登記原因に基づき結了時の清算人により登記申請を行う場合、会社法人等番号の提供により清算人の資格証明情報(閉鎖事項証明書)の提供に代えることができるか。

A19 代えることができる。ただし、清算結了時の会社法人等番号を提供する場合に限られる。

Q20 法人である代理人(司法書士法人を含む)によって登記の申請をする場合において、当該代理人の会社法人等番号を提供した場合は、当該代理人の資格証明情報の提供に代えることができるか。

A20 代えることができる(令第7条1項2号、規則第37条の2)。
 なお、資格証明書を添付する場合は、作成後3月以内のものでなければならない(令第17条1項)。

Q21 会社法人等番号を提供した場合は、会社分割による権利の移転登記における登記原因証明情報の一部としての登記事項証明書の提供に代えることができるか。

A21 代えることができる。ただし、閉鎖事項については、Q12と同じ。

Q22 会社法人等番号を提供した場合は、登記原因証明情報又は本人確認情報の一部としての業務権限証明書の作成者の代表権限等を証する情報の提供に代えることができるか。

A22 代えることができる。

Q23 会社法人等番号を提供した場合は、嘱託登記における登記義務者の承諾書及び仮登記義務者の承諾書を作成した法人の資格証明情報の提供に代えることができるか。

A23 代えることができる。

Q24 その他会社法人等番号の提供により代替することができるとされる情報はあるか。

A24 準則の改正により以下の情報が認められた。
 1 不正登記防止申出書に添付すべき法人の代表者の資格を証する書面(準則第35条3項2号)
 2 不正登記防止申出書に添付すへき代理人の権限を証する書面のうち、法人である代理人の代表者の資格を証する書面(準則第35条3項3号)
 3 法人の代表者に事前通知をした場合において、その法人の他の代表者から申出をするときの当該他の代表者の資格を証する書面(準則第46条2項)

Ⅲ 登記官の審査

Q25 登記官が審査する法人の登記情報(会社法人等番号で確認するもの)は、不動産登記申請の「受付時」のものに限られるか。

A25 原則として、受付時の登記情報によって調査される。なお、当該法人について法人登記が申請中である場合についてはQ4参照。

Q26 会社法人等番号を提供しながら作成後1月以内の登記事項証明書を提供した場合、登記事項証明書による審査を求めることを日的として、会社法人等番号を提供しないこととする補正が認められるか。

A26 当該法人が登記中の場合を除き、認められない。

Ⅳ 照会番号

Q27 照会番号について、今回の改正に関連して、その利用方法に変更は生じるか。

A27 利用方法についての変更はない。なお、照会番号が提供された場合において、登記官が確認するのは、登記官が申請の審査を行う時点の登記情報であり、照会番号発行時点の登記情報ではない。したがって、照会番号が提供されたとしても、法人が登記中の場合は、当該法人登記の完了後に当該不動産登記申請についての審査が行われる。

Ⅴ 司法書士実務における留意点1(一般)

Q28 登記申請の依頼を受けた司法書士は、いっの時点で法人の本店又は事務所、商号又は名称及び代表者等の申請権限(以下、「代表資格等」という。)を確認すべきか。

A28 司法書士業務は委任契約により始まることから、受任時に代表資格等を確認する必要がある。
 また、申請時の代表資格等を確認することも重要である。

Q29 登記申請の依頼を受けた司法書士は、受任時と申請時の両方において代表資格等を確認すべきか。

A29 形式的には、受任時と申請時の両方において代表資格等の確認が必要であるが、実務の実際においては、受任した後直ちに(原則として同日内に)申請する場合は、特別な場合を除き、受任時の確認で足りると思われる。

Q30 司法書士の事務所環境についてどのような整備が必要となるか。

A30 司法書士は登記の依頼を受けるにあたって、履歴事項証明書や代表者事項証明書による代表資格等の確認と登記情報提供サービスを利用した代表資格等の確認とを、事件に応じて選択している。最新の登記情報により代表資格等を確認するためには、登記情報提供サービス利用の利便性が高いことから、その利用ができるインターネットの環境等の整備をすべきである。

Q31 今後、依頼者が資格証明書の提供に代えて会社法人等番号を提供し、司法書士が登記情報にアクセスすることによって代表資格等の確認を行うことが多くなると予想されるが、犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)上留意すべき点はあるか。

A31 犯罪収益移転防止法においては、登記事項証明書又は印鑑証明書の原本の提示を受けることが法人の本人確認の原則的方法であり、その点に留意する必要がある。

Ⅵ 司法書士実務における留意点2(登記原因発生時に委任を受け、依頼者の指示により後日登記の申請を行う場合)

Q32 登記原因発生時に委任を受け、依頼者の指示により後日登記の申請を行う場合、司法書士は、いつの時点で代表資格等を確認すべきか。*下図参照

   登記原因発生  ⇒  登記申請
     受任
      ↑         ↑
    本人確認      資格確認
    資格確認

A32 受任時における代表資格等の確認を要することは当然であるが、申請時における代表資格等の確認も重要である(Q28参照)。
 なお、委任を受けた後で代表者に変更があった場合(代表者甲から委任をけた後、代表者が乙に変更された場合)には、代理権不消減規定(不動産登記法第17条)の適用を受けるので、司法書士の代理権は消減しない。

Q33 平成17年改正不動産登記法の施行により、申請情報に代表者の氏名を記録することとなったが、代表者甲から委任を受け、代表者が乙に変更された後に登記の申請をする場合、申請情報として記録すべき代表者の氏名は、甲と乙のどちらか。

A33 申請情報に記録すべき代表者の氏名は申請時におけるものでなければならないので、乙の氏名を記録する。

34 Q33の場合において、申請情報に甲の氏名が記録されている場合、申請情報の記録は補正の対象となるか。

A34 補正の対象となる。準則第36条第4項に該当しない。

Q35 Q32の場合、代理権不消滅に係る実務として、他に留意する点はあるか。

A35 申請情報に代理権不消減である旨を記録する必要がある。また、当該法人の会社法人等番号により代表者甲の資格を確認することができない場合は、その資格を確認することができる登記事項証明書を添付しなければならない。
 なお、登記委任状については、甲名義のものを添付すればよいが、代理権不消減に係る通達では、不動産と法人の管轄が同一で印鑑証明書の添付が省略できる場合(指定登記所を除く。)であっても、甲の印鑑証明書の添付を要するとされており、その点に留意すへきである。

Ⅶ その他の留意点(一般)

Q36 不動産登記において法人が当事者となる場合、他に留意する点はあるか。

A36 依頼者である法人の代表者等の変更がないかどうかについて、当該法人に確認する必要がある場合がある。
 また、受任時及び申請時の代表資格等の確認の問題と、犯罪収益移転防止法における法人の本人確認(会則に基づく場合を含む。)の問題と、を混同しないようにすへきである。

Q37 支店の管理番号を提供した場合は、登記名義人である法人の住所又は名称変更登記における変更証明情報の提供に代えることができるか。

A37 代えることができない。管理番号は会社法人等番号ではない。


参考

★法務局発行の取り扱いQ&A    ⇒ 不動産登記における会社法人等番号の取り扱いQ&A

★金融機関の会社法人等番号は   ⇒ 会社法人等番号
★金融機関の沿革図は       ⇒ 大手金融機関沿革図

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