不動産登記法等の一部改正に伴う登記事務の取扱いについて(平成5年7月30日 法務省民三第5320号通達)
不動産登記法等の一部改正に伴う登記事務の取扱いについて(通達)
不動産登記法の一部を改正する法律(平成5年法律第22号)、登記手数料令の一部を改正する政令(平成5年政令第226号)及び不動産登記法施行細則及び抵当証券法施行細則の一部を改正する省令(平成5年法務省令第32号)が本年10月1日から施行され、これに伴い不動産登記事務取扱手続準則を改正し(平成5年7月30日付け民三第5319号本職通達)、同日から実施することとしたところ、これに伴う不動産登記事務の取扱いについては、下記の点に留意するよう、貴管下登記官に周知方取り計らい願います。
なお、本通達中、「改正法」とあるのは不動産登記法の一部を改正する法律(平成5年法律第22号)を、「法」とあるのは改正法による改正後の不動産登記法を、「改正省令」とあるのは不動産登記法施行細則及び抵当証券法施行細則の一部を改正する省令(平成5年法務省令第32 号)を、「細則」とあるのは改正省令による改正後の不動産登記法施行細則を、「準則」とあるのは改正後の不動産登記事務取扱手続準則をいう。
記
第一 地図に準ずる図面の閲覧制度の新設
一 改正法施行時における地図に準ずる図面の備付け
(1)地図に準ずる図面として備え付ける図面
次に掲げる図面その他の図面で地図保存簿に記載されて登記所に保管されているもののうち、地図として備え付けられていないものは、後記(2)に該当するものを除き、平成5年10月1日付けをもって、法第24条の3第1項に規定する地図に準ずる図面として備え付けるものとする(準則第29条第1項参照)。
ア 旧土地台帳法施行細則第2条の地図
イ 国土調査法第20条第1項の規定により送付された地籍図並びに土地改良登記令第6条第2項第2号、土地区画整理登記令第6条第2項第2号、新住宅市街地開発法による不動産登記に関する政令第8条第2項及び首都圏の近郊整備地帯及び都市開発区域の整備に関する法律による不動産登記に関する政令第8条第2項の土地の所在図その他これらに準ずる図面(準則第28条参照。以下「地籍図等」という)
(2)地図に準ずる図面として備え付けない図面
(1)の図面であっても、次に掲げるものは、地図に準ずる図面としての要件を欠き、又は地図に準ずる図面として備え付けることを適当としない特別の事情があるものとして扱う。
ア 現地の占有状況等と図面上の表示とが大幅にかい離している地域(いわゆる地図混乱地域)の図面であることが明らかであるため、現に便宜的閲覧にも供していないもの、又は現に便宜的閲覧に供しているが、地図混乱地域に関するものであることを図面に表示しているもの
イ 破損若しくは汚損が著しく、又は破損若しくは滅失のおそれがある等の理由で、現に便宜的閲覧にも供していないもの
ウ その他閲覧に供することが相当でない事由が存するため、現に便宜的閲覧にも供していないもの
(3)地図に準ずる図面の備付手続
ア 地図保存簿等への記載
地図に準ずる図面としての備付けに当たっては、図面に番号を付し、地図保存簿に当該番号等所要の事項を記載することを要するが(二(1)ア参照)、改正法の施行に当たって、既に図面に番号が付され、地図保存簿に当該番号等所要の事項が記載されている場合には、特段の措置をとることを要しない。
イ 地図に準ずる図面の備付けの報告
地図に準ずる図面の備付けに当たっては、準則附録第 15 号様式による報告書により報告することを要するが(二(1)イ参照)、当面は、登記所ごとにその総枚数のみを報告することをもって足りるものとする。
なお、報告を受けた監督法務局又は地方法務局の長は、これを本職あて報告するものとする。
二 改正法施行後における地図に準ずる図面の備付け
(1)地図に準ずる図面の備付け等
ア 地図保存簿等への記載
登記所に送付されたが、地図として備え付けないこととされた地籍図等(準則第28条第1項ただし書、第2項参照)で、地図に準ずる図面として備え付けるものには、番号を付し、地図保存簿の番号欄に当該番号を、備考欄に地図に準ずる図面である旨を記載する等所要の事項を記載するものとする。
イ 地図に準ずる図面の備付けの報告
地図に準ずる図面の備付けに当たっては、準則附録第15号様式による報告書により報告するものとする。
(2)地図に準ずる図面の取扱い
地図に準ずる図面についての管轄転属に伴う移送、事変を避けるため登記所外へ持出した場合の報告、滅失した場合の申報及び具申、滅失するおそれがある場合の申報及び具申、閲覧の請求手続、手数料の納付方法、閲覧申請書の受付並びに閲覧の方法は、地図についての取扱いと同様である(法第24条の3第4項、第10条、細則第37条の2)。
なお、地図に準ずる図面を再製する場合には、法第24条の規定による手続をとることを要する(昭和44年4月1日付け民事甲第481号法務大臣訓令及び同日付け民事甲第483号本職依命通達)。この場合には、再製後の図面の中央下部欄外に「法務大臣の命により再製 年月日」と記載し、従前の図面の余白に「法務大臣の命により再製閉鎖 年月日」と記載し、登記官が押印した上、地図保存簿への記載をする等所要の手続をとるものとする。
三 非備付図面の取扱い
(1)一(2)の図面及び登記所に送付されたが地図又は地図に準ずる図面のいずれとしても備え付けられなかった地籍図等については、番号を付すとともに当該図面の余白に非備付図面である旨の記載をし、地図保存簿の番号欄に当該番号を、備考欄に非備付図面である旨を記載するものとする。ただし、番号の付与及び地図保存簿への番号の記載に関しては、改正法の施行に当たって、既に図面に番号が付され、地図保存簿に当該番号が記載されている場合には、特段の措置をとることを要しない。
(2)(1)の図面を保管するに当たっての報告については、一(3)イに準じて取り扱うものとする。
(3)(1)の図面の閲覧については、従来の便宜的に閲覧に供していない図面についての扱いと同様とする。
第二 登記申請代理権の不消滅に関する規定の新設
一 委任による登記申請代理権の不消滅に関する規定が新設されたが、委任者の法定代理人の代理権が消滅した場合もこれに該当し(法第26条第3項)、この場合の法定代理人には、法人の代表者も含まれる。したがって、細則第44条の8第1項に規定する場合において、申請書に添付された登記申請の代理権限を証する書面の作成名義人である法人の代表者が現在の代表者でないと認められるときであっても、次に掲げる場合には、これを適法な登記申請の代理権限を証する書面の添付があるものとして扱う。なお、その申請が細則第42条第1項又は第42条の2第1項の申請であるときは、当該代表者の印鑑証明書(作成後3か月以内のものに限る)の提出があることを要する。
ア 登記申請の代理人が当該代表者の代表権限が消滅した旨及び当該代表者が代表権限を有していた時期を明らかにし、当該法人の登記簿でそのことを確認することができる場合
イ 当該代表者の代表権限を証する書面(作成後3か月以内のものに限る。)が申請書に添付されている場合
二 委任による登記申請代理権の不消滅に関する規定は、登記申請の委任がされた後、改正法施行前に本人の死亡等の事由が生じた場合には、適用されない(改正法附則第2項)。
第三 保証書制度の改善
登記義務者の権利に関する登記済証が滅失した場合に申請書に添付すべき保証書における保証人としては、その登記申請に係る不動産の所在地の登記所以外の登記所で登記を受けたことのある成年者も資格を有することとされた(法第44条)。この場合に保証人が登記を受けていることを確認するために申請書に添付すべき登記簿の謄本は、保証書に添付されるものではないから、作成後3か月以内のものであることを要せず(細則第46条第3項の適用はない)、また、細則第44条の11の規定によりその原本の還付をすることができる。
第四 地図作製の際の職権による分筆又は合筆の登記手続の新設
一 法第81条の2第5項に規定する「地図ヲ作製スル場合ニ於テ必要アルトキ」とは、次に掲げる場合をいう。
ア 分筆の登記については、土地の一部がみぞ、かき、さく、へい等で区画されている場合その他の場合で、明らかに土地の管理上分筆の登記を行うことが相当であると認められるとき。
イ 合筆の登記については、2筆以上の土地の筆界を現地について確認することが困難な場合、それらの全部又は一部が著しく狭小である場合その他の場合で、明らかに土地の管理上合筆の登記を行うことが相当であると認められるとき。
二 この規定により分筆又は合筆の登記を行うには、登記簿の表題部に記載された所有者又は所有権の登記名義人に異議がないことを確認した上、土地の調査書その他適宜の書面にその旨及びその年月日を記載し、その者に署名又は記名押印させるものとする。
なお、その後分筆又は合筆の登記を行うまでに表題部に記載された所有者又は所有権の登記名義人に変更があったときは、新登記名義人につき同様の手続をとるものとする。
三 この規定による合筆の登記は、二の手続の終了後に行うものとし、分筆の登記は、地図の備付けの時に行うものとする。
四 この規定による合筆の登記をしたときは、合併による所有権の登記の登記済証を作成することを要しない。
第五 地役権の登記がある土地の合筆手続の整備
一 合筆の登記
(1)承役地についてする地役権の登記がある甲地を乙地に合併する合筆の登記をする場合において、合併後の乙地の一部に地役権が存続することとなるときは、甲地の登記用紙から乙地の登記用紙に移記した地役権の登記に、地役権が存続する部分及び地役権図面の番号を付記することを要する(法第87条第2項、第84条第1項、細則第57条)。
(2)この場合においては、移記した地役権の登記にその登記が甲地であった部分のみに関する旨の記載をすることをも要するが(法第87条第1項)、その記載は、その登記を合併前の甲地の登記用紙から移記した旨の記載をすることをもって足りるものとする。
二 合併の登記
(1)承役地についてする地役権の登記がある甲地を分割してその一部を乙地に合併する場合において、合併後の乙地の一部に地役権が存続することとなるときも、一(1)と同様の手続をする(法第85条第5項、第84条第1項、細則第57条)。
(2)この場合においては、転写した地役権の登記に合併した部分のみが甲地と共に地役権の目的である旨の記載をすることをも要するが(法第85条第2項)、この記載中合併した部分のみが地役権の目的である旨の記載は、その登記を合併前の甲地の登記用紙から転写した旨の記載をすることをもって足りるものとする。
三 改正法施行前に、承役地についてする地役権の登記がある土地につき合筆又は合併の登記の申請があった場合においては、その申請については、従来と同様に取り扱う(改正法附則第3項)。
第六 建物が合体した場合の登記手続の新設
一 建物の合体
建物の合体とは、数個の建物が、増築等の工事により構造上1個の建物となることをいう。その数個の建物が一棟の建物を区分した建物(以下「区分建物」という)であって、これらが隔壁除去等の工事によりその区分性を失った場合も、これに含まれる。
二 登記の申請
(1)建物の合体があった場合における登記の申請は、合体前の建物が未登記であるときはその所有者から、合体前の建物につき表示の登記のみがされているときは表題部に記載された所有者から、合体前の建物につき権利の登記がされているときは所有権の登記名義人から、建物の合体後1か月以内に、合体による建物の表示の登記及び合体前の建物の表示の登記の抹消につき同一の申請書をもってすることを要する(法第93条の4の2 第1項前段)。この登記の申請は、合体前の建物の所有者等が異なる場合には、そのいずれかの者からすることもできる。
(2)未登記の合体前の建物(区分建物を除く)について所有者の変更があったときは新所有者はその変更のあった日から1か月以内に、表示の登記又は権利の登記がされている合体前の建物について所有者の変更があったときは新登記名義人は自己のため登記を受けた日から1か月以内に、(1)の登記の申請をすることを要する(法第93条の4の2 第5項、第81条第3項、第93条第3項、第80条第3項)。
(3)(1)の登記の申請をする場合において、合体前の建物が未登記である建物と所有権の登記のある建物であるときは、申請人は、(1)の登記の申請書と同一の申請書をもって、未登記の建物の所有者のために合体後の建物につき所有権の登記をも併せて申請することを要する。合体前の建物が表示の登記のみがされている建物と所有権の登記のある建物であるときは、申請人は、表題部に記載された所有者のために、同様の申請をすることを要する(法第93条の4の2第1項後段)。
なお、この所有権の登記を申請する場合には、申請人は、法第26条第1項の規定により登記所に出頭することを要する。
この場合の所有権の登記の申請に当たって納付すべき登録免許税の額は、合体後の建物の価額に、所有権の登記のない建物の所有者又は表題部に記載された所有者が合体後の建物につき有することとなる持分の割合を乗じて計算した金額を課税標準として、これに1、000分の6の税率を乗じて得た金額である(登録免許税法第10条第1項、第2項、別表第一の一(一)参照)。
(4)合体前の建物がいずれも未登記であるときは、登記の申請については、(1)から(3)までの申請ではなく、法第93条に規定する新築による建物の表示の登記の申請の例による(法第93条の4の2第2項)。
三 申請書の記載
(1)二(1)の登記の申請書には、合体前の各建物の表示及び合体後の建物の表示を記載するとともに、登記原因及びその日付を記載することを要する(法36条第1項第4号、同条第3項から第5項まで)。この場合の登記原因の記載は、合体前の建物の表示の登記の抹消においては「何番と合体」と、合体による建物の表示の登記においては「何番、何番を合体」とするものとする。
(2)合体前の各建物の所有者が異なるときは、それぞれの所有者が合体後の建物について有することとなる持分を申請書に記載することを要する(法第39条)。
また、合体前の各建物の所有者が同一である場合であっても、合体前の建物につき所有権の登記以外の所有権に関する登記又は先取特権、質権若しくは抵当権に関する登記(以下「抵当権等に関する登記」という)があって、その登記が合体後の建物につき存続すべきものであるときは、その登記の登記名義人、登記原因、その日付、登記の目的及び受付番号が同一である場合を除き、合体後の建物につきその登記に係る権利の目的を明らかにするため、所有者が同一でないものとみなした場合の持分を記載することを要する(法第93条の4の2第3項第3号)。この場合における持分の記載は、申請人の表示に符号を付し、「持分3分の2甲某〔あ〕、3分の1甲某〔い〕」のようにするものとする。
(3)合体前の建物について所有権の登記があるときは、その登記を表示するため、合体前の建物の家屋番号、登記の順位番号、申請書受付の年月日及び受付番号並びに登記名義人の氏名又は名称を記載することを要する(法第93条の4の2第3項第1号、細則第4 0条第1項)。
(4)合体前の建物に抵当権等に関する登記で合体後の建物又はその持分の上に存続すべきものがあるときは、その登記を表示するため、合体前の建物の家屋番号、登記の目的、順位番号、申請書受付の年月日、受付番号及び登記名義人の氏名又は名称並びに目的たる権利の表示を記載することを要する(法第93条の4の2第3項第2号、細則第40条第2項)。この場合における目的たる権利の表示の記載は、合体後の建物を基準として、「甲某持分」のようにし、(2)後段の場合においては、「甲某〔あ〕持分」のようにするものとする。
四 申請書の添付書類等
(1)二(1)の登記の申請を所有権の登記名義人がする場合には、その登記済証を申請書に添付することを要する。この場合において、その申請人が複数の合体前の建物の登記名義人であるときは、そのいずれかの建物についての登記済証を添付すれば足りる(法第93条の4の2第4項第1号、細則第42条の2第1項)。
また、登記済証が滅失したときは、保証書を申請書に添付することを要するが(法第93条の4の2第5項、第44条)、申請人が複数の合体前の建物の登記名義人であるときは、細則第46条第1項第1号の規定により保証書に不動産の表示を記載するには、合体前のいずれかの建物の表示を記載すれば足りる。
(2)合体前の各建物の所有者が異なる場合において、その建物の一方につき登記済証が滅失したため、合体前の建物の登記済証と保証書とを申請書に添付して登記の申請があったときは、法第44条の2第2項の申出があった時に全部の申請を受け付けたものとして処理するものとする(準則第67条参照)。
(3)合体前の建物について所有権の登記がある場合において、その登記名義人が申請人であるときは、その者の印鑑証明書を申請書に添付することを要する(細則第42条の2)。
(4)合体前の各建物の所有者が異なる場合には、所有権を証する書面として、合体前の各建物の所有者が合体後の建物について有することとなる持分の割合を証する書面を申請書に添付することを要する(法第93条の4の2第5項、第93条第2項)。この書面が合体前の各建物の所有者の作成に係る証明書である場合には、(3)により印鑑証明書を添付する登記名義人以外の作成者の印鑑証明書をこれに添付することを要するものとする。なお、合体前の各建物の所有者全員が申請人である場合には、その申請書が持分の割合を証する書面を兼ねるので、申請書に印鑑証明書の添付があることをもって足りる。
(5)合体後の建物の持分の上に存続する抵当権等に関する登記がある場合には、合体後の建物の持分の割合を定めるについてのその登記名義人の承諾書(印鑑証明書付き)又はこれに対抗することができる裁判の謄本を申請書に添付することを要する(法第93条の4の2第4項第2号)。
この場合において、合体後の建物の持分の上に存続する抵当権の登記について抵当証券の所持人又は裏書人があるときは、その者の合体後の建物の持分の割合を定めるについての承諾書(印鑑証明書付き)又はこれに対抗することができる裁判の謄本及び当該抵当証券をも申請書に添付することを要する(法第93条の4の2第4項第2号、第5項、第56条第2項)。
(6)合体前の建物についてされた抵当権等に関する登記であって、申請書に合体後の建物又はその持分の上に存続するものとしての記載のないものがあるときは、その登記の登記名義人が権利の消滅を承諾したことを証する書面(印鑑証明書付き)又はこれに対抗することができる裁判の謄本を申請書に添付することを要する(法第93条の4の2第4項第3号)。この場合において、この権利を目的とする第三者の権利に関する登記があるときは、当該第三者の承諾書(印鑑証明書付き)又はこれに対抗することができる裁判の謄本をも申請書に添付することを要する(法第93条の4の2第5項、第83条第5項)。また、消滅する抵当権の登記について抵当証券の所持人又は裏書人があるときは、その者の承諾書(印鑑証明書付き)又はこれに対抗することができる裁判の謄本及び当該抵当証券をも申請書に添付することを要する。
(7)敷地権の表示を登記している合体前の区分建物であって建物のみに関する旨の付記のない一般の先取特権、質権又は抵当権の登記があるものが合体した場合の登記の申請において、申請書に合体後の建物につき敷地権の表示の記載がないときは、共同担保目録を申請書に添付することを要する。この場合において、合体前の建物に関する権利が他の登記所の管轄に属する不動産に関する権利と共同担保の関係にあるときは、その登記所の数に応じた共同担保目録をも添付することを要する(法第93条の4の2第5項、第81条の4第2項)。
(8)合体後の建物が区分建物であって、申請書にその建物についての敷地権の表示の記載がされている場合においても、合体前の各建物の敷地権を合わせたものが合体後の建物の敷地権とされているときは、法第93条の3第2項から第4項までに規定する書面等の添付を要しない。また、合体後の建物が区分建物であって、その所有者がその建物の所在する土地につき登記された所有権、地上権又は賃借権を有するにもかかわらず、その建物について申請書に敷地権の表示の記載がない場合においても、合体前の建物がいずれも敷地権の表示を登記したものでないときは、法第93条の3第5項に規定する書面の添付を要しない(法第93条の4の2第6項)。
五 合体による建物の表示の登記
(1)合体による建物の表示の登記をする場合に、合体前の各建物のいずれにも所有権の登記があるとき、又は法第93条の4の2第1項後段の規定により所有権の登記の申請があるときは、合体後の建物の表題部の所有者に関する事項を記載することを要しない。この場合においては、合体後の建物の登記用紙中甲区事項欄に、申請書の記載に基づき表題部に記載すべき所有者の住所、氏名及び合体によってその者の所有権の登記をする旨並びにその登記の年月日を記載して、登記官が押印するものとする。この場合において、三(2)に該当するときは合体後の建物についての各持分を、法第93条の4の2第1 項後段の規定による申請により所有権の登記をするときは申請書受付の年月日及び受付番号をも記載することを要する(法第93条の12の2第1項、第51条第2項)。
(2)合体前の建物について抵当権等に関する登記で合体後の建物又はその持分の上に存続すべきものがあるときは、その登記に係る権利の順序に従って、合体後の建物の登記用紙中相当区事項欄に合体前の建物の登記用紙からその登記を移記し、その末尾に法第93 条の12の2第2項の規定により家屋番号何番の順位何番の登記を移記した旨及びその登記の年月日を記載して、登記官が押印するものとする(法第93条の12の2第2項)。この場合において、移記すべき登記が合体後の建物の持分の上に存続することとなるときの登記の目的の記載は、当該持分を目的とするものとして引き直し、「何某持分抵当権設定」のようにするものとする。
合体前の建物についての担保権の登記に係る共同担保目録については、法第128条第1項後段、第2項及び第3項の規定により所要の手続をするものとする。
合体後の建物の持分の上に存続すべき抵当権の登記に係る抵当証券が申請書に添付されているときは、当該抵当証券における目的たる建物の表示その他の記載事項につき所要の変更をするものとする(抵当証券法第19条参照)。
(3)(2)により移記すべき登記が処分の制限の登記その他の現に効力を有する所有権の登記以外の所有権に関する登記で申請書に記載された所有権の登記より先順位のものであるときは、(1)によってする合体による所有権の登記に先立ちその登記に係る権利の順序に従って、その登記を移記するものとする。この場合においては、処分の制限の登記等の移記に伴って移記すべき登記の移記については、その末尾に処分の制限の登記等の移記のため家屋番号何番の順位何番の登記を移記した旨及びその年月日を記載して、登記官が押印するものとする。
この場合における移記する登記についての登記の目的及び権利の記載は、合体後の建物につき所有権の登記名義人が有することとなる持分であって、その登記に係るものの割合に引き直し、「何某持分(合体前建物所有権)処分禁止仮処分」及び「持分参分の壱何某」のようにするものとする。
(4)四(6)の書面を添付してされた登記の申請に基づき、法第93条の12の2第3項の規定により合体前の建物について抵当権等に関する登記が消滅した旨を付記すべき場合には、登記の目的の記載は「何番抵当権抹消」と、登記原因の記載は「消滅承諾」とし、その付記の年月日を記載するものとする。この場合においては、消滅した権利に関する登記は朱抹しないものとする。
(5)合体前の建物についての賃借権の登記は、合体後の建物の登記用紙に移記することを要しない。
(6)合体前の建物に敷地権の表示が登記されている場合において、合体後の建物に敷地権の表示を登記しないときは、法第93条の16に規定する所要の登記をすることを要する(法第93条の12の2第4項。昭和58年11月10日付け民三第6400号本職通達第六の三から八まで参照)。
(7)合体後の建物に敷地権の表示を登記した場合であっても、合体前の建物に敷地権の表示の登記があるときは、法第93条の4の規定により敷地権の目的たる土地の登記用紙に敷地権たる旨の登記をすることを要しない(法第93条の12の2第5項)。
六 合体前の建物の表示の登記の抹消
合体前の建物の表示の登記の抹消をする場合には、登記原因及びその日付並びに登記の年月日の記載は、原則として合体前の建物の登記用紙中表題部の該当欄の次行にするものとし、合体前の建物の表示を朱抹した上、その登記用紙を閉鎖することを要する(法第93 条の12の2第6項、第88条)。
七 登記済証の作成等
(1)合体後の建物につき所有権の登記がない場合の登記済の記載は、申請書の副本に、準則附録第 52 号様式の印版を押印してするものとする。
(2)合体後の建物につき所有権の登記をした場合の登記済の記載は、申請書の副本に、準則附録第51号様式及び附録第53号の2様式の印版を押印してするものとする。
(3)法第60条第2項の規定により登記済証(又は保証書)に記載すべき登記の目的の記載は、「合体」とする(準則第72条参照)。
八 裁判所への通知
合体前の建物にされた民事執行法の規定による差押えの登記を合体後の建物の登記用紙に移記したときは、その旨を執行裁判所に別紙様式により通知するものとする。
九 申請書類の保存期間
合体による建物の表示の登記に係る登記の申請書及びその添付書類(建物図面及び各階平面図を除く)は、申請書受付の日から10年間保存することを要する(細則第37条の3 第2項)。
十 附属建物の合体に係る登記
上記一から九までの手続は、2個以上の建物が合体した場合に関するものであって(法第
93条の4の2第1項参照)、主たる建物と附属建物とが合体した場合又は附属建物と附属建物とが合体した場合には、適用がない。この場合には、準則第162条の手続をするものとする。なお、この場合の登記原因の記載は、「合棟」から「合体」に改められた。
十一 経過措置等
(1)合体による建物の登記手続に関する規定は、改正法施行前に合体があった場合で、これによる登記の申請がされていないときにも、適用される。この場合における登記の申請に係る期間については、改正法施行の日(平成5年10月1日)から起算する(改正法附則第6項)。
(2)数個の建物が合体したことにより改正法施行前にされた登記の申請は、これに基づき改正法施行前に登記がされている場合を除き、法第93条の4の2第1項前段の申請とみなされ、法の規定が適用される。
(3)法第93条の4の2第1項前段の申請とみなされる場合においては、その申請人は、改正法施行の日から起算して1か月以内に、同条第3項各号に掲げる事項を記載した書面、同条第4項各号に掲げる書面及び同条第五項において準用する規定に規定する書面を提出することを要し(改正法附則第4項)、また、申請人が合体前の建物の所有権の登記名義人であるときは、細則第42条の2の規定による印鑑証明書の提出をも要する(改正省令附則第2項)。
なお、この場合において保証書の提出があったときは、法第44条の2に規定する手続をとることを要する。
(4)(2)の場合において、合体前の建物が所有権の登記のない建物と所有権の登記のある建物であるときは、(3)の書面の提出と同時に、法第93条の4の2第1項後段の登記の申請がなされることを要する(改正法附則第5項)。
(5)数個の建物が合体した場合において、従来の取扱いにより建物の表示の登記及び建物の滅失の登記の申請が改正法施行後にされたときは、法第49条第4号の規定により却下するものとする。
(6)主たる建物と附属建物とが合体した場合又は附属建物と附属建物とが合体した場合における準則第162条の規定による登記原因の記載(一〇参照)については、準則の改正前に既に登記がされているものにおいては、その記載(「合棟」)を改めることをしない。
第七 予告登記に関する手続の整備
一 予告登記の抹消の嘱託は、確定判決等により確定した登記の抹消又は回復を請求する権利を放棄したことを証する書面が提出された場合にも、するものとされた(法第145条第
2項)。なお、予告登記及びその抹消の嘱託は、裁判所書記官が行うこととされた(法第
34条、第145条)。
二 法第145条第2項の規定による予告登記の抹消の登記の登記原因の記載は、「放棄書面提出」とし、登記原因の日付は、裁判所に当該書面が提出された日とする。
第八 地積測量図における境界標等の記載
地積測量図には、土地の筆界に境界標がない場合には、適宜の筆界点と近傍の恒久的地物との距離、角度等の位置関係を記載することを要することとされたが(細則第42条の4 第2項)、改正省令施行前に申請された登記の申請書に添付すべき地積測量図については、従来の取扱いと同様である。
第九 登記の記載
改正法施行後における地役権の登記がある土地の合筆の登記及び合体による登記の記載は、別紙の振り合いによるものとする。