真正な登記名義の回復の登記とは?
ある不動産の登記簿(登記記録)に記載されている所有者はAだが、真実の所有者はBである。登記簿上の所有者Aを真実の所有者B名義に直したいとき、どのような手続きをとったらよいのでしょう?
不動産登記法の理念から言えば(中間を省略した登記は許されない)、Aの所有権登記を抹消したうえで、あらためてBの所有権登記をし直さなければなりなりません。
具体的には、登記簿の記載上AがCから所有権移転登記を受けていたならば、C→Aの所有権移転登記を抹消してC名義に戻してから、あらためてC→Bの所有権移転登記をするという手続きになります。つまり、正しかった時点(C名義の時点)まで遡ってから全てをやり直すのが本来の筋ということです。
この全てをやり直す登記の手続きは、A、Bだけではすることはできません。Cの関与も必要となり、Cには、実印、印鑑証明書、及び登記識別情報または登記済証(Aに所有権移転したときに効力がなくなって破棄したかもしれない!)等を用意してもらわなければなりません。Cに住所等の変更があるときには、住所の変更証明書(住民票の写しや戸籍の附票等)も必要です。Cが健在ならばいいけれど、既に死亡していたら、その法定相続人全てを調べてから、連絡を取って協力してもらわないといけません。
また、Aが所有者であるときにDが抵当権等の担保権の設定登記をしていれば、C→Aの所有権移転登記を抹消する前提として、Dの抵当権等の抹消登記もしくは抹消の承諾をしてもらわなくてはなりません。
しかし、現実問題として、前所有権登記名義人Cの協力や抵当権者Dの承諾を得ることはほぼ無理です。
そのときに脚光をあびるのが「真正な登記名義の回復」という所有権移転登記なのです。
この「真正な登記名義の回復」登記とは、誤った所有権登記を抹消して正しい所有権登記を入れ直すのではなく、誤った所有権の登記名義人から正しい登記名義人へ直接「移転登記」をするという方法により正しい登記名義を実現するという方法です。
正規の方法: 第一段階A→C ★A名義の所有権を抹消してC名義の所有権登記を復活させる。
第二段階C→B
真正な登記名義の回復:A→B
誤った所有権の登記を前提として直接AからBに移転登記をすることになるため、Aの所有権に設定した担保権を抹消する必要もなく(担保権がついたまま所有権が移転する)、AとBのみで登記申請を行うができます。
ただし、不動産登記法の理念に反する例外ともいえる登記なので、安易にこの登記を認めるべきではないともいえます。安易にこの登記を認めれば、虚偽の登記名義人が登記されることを助長することにもつながりかねないので、実務では、この登記には下記の3点の要件が必要であると考えられています。
真正な登記名義の回復登記が認められる要件は3つ
(1)現在の登記名義人Aは真実の所有者ではなく、その登記が実体と合っていないこと。
(2)Bが真実の所有者であること。
(3)真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記をする必要があること。
①前所有者Cの協力が得られないこと。
②担保権者Dの協力が得られないこと。
※①だけで良いという見解、①②の両方が必要だという見解、①②の理由だけでなく、CDの協力を判決によって得るには時間的な余裕がない等の具体的理由(下記「登記原因証明の記載例」Ⅲのかっこ書きの部分)が必要であるとの見解があります。
[登記原因証明の記載例]
Ⅰ 本件不動産につき、○年○月○日売買を原因として、CからAへの所有権移転登記がされている。(○年○月○日△法務局△出張所受付第□号)
Ⅱ しかし、上記Ⅰの所有権移転は、誤って関係書類を作成したものであり、実際はCB間において○年○月○日売買契約を締結し、これに基づきBがCから本件不動産の所有権を取得したものである。
Ⅲ 本来、CからAへの所有権移転登記を抹消し、CからBへの所有権移転登記を行うべきところ、本件不動産には、D銀行名義の抵当権が設定されており、Aの所有権登記の抹消についてのD銀行の協力が得られない。(また、D銀行の協力を待っていてはBの資金繰上問題が生ずることになる。)
Ⅳ よって、当事者は、真正な登記名義の回復を原因として、AからBへの所有権移転の登記を申請をする。
[真正な登記名義の回復に関する先例・通達、質疑応答]
相続による所有権の移転の登記がされている農地について真正な登記名義の回復を登記原因として他の相続人に所有権を移転する登記の申請に関する農地法所定の許可書の提供の要否等
相続による所有権の移転の登記がされている農地について、真正な登記名義の回復を登記原因として、他の相続人に所有権の移転の登記を申請する場合の農地法所定の許可書の提供の要否については、登記原因証明情報の内容として事実関係(相続登記が誤っていること、申請人が相続により取得した真実の所有者であること等)又は法律行為(遺産分割等)が記録されていれば、当該許可書を提供することを要しない。
この場合における昭和52年8月22日付け第4239号民事局第三課長依命通知「時効取得を原因とする農地の所有権移転登記等の申藷があった場合の取扱いについて」による農業委員会宛ての通報を要しない。
(平24.7.25、民二第1,906号民事局民事第二課長通知)
判決による被相続人(死亡者)への真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転の登記の可否
登記手続を命ずる給付判決を得てこれが確定すれば、当該判決書の正本及び確定証明書を添付して、原告が単独で被相続人(死亡者)への真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転の登記を申請することができる。
(平13.3.30、民二第874号民事局民事第二課長回答)
無効な遺産分割協議及び遺留分減殺請求権の行使があった場合の真正な登記名義の回復による所有権移転
1 甲の共同相続人乙・X・Y・A・B・C間の遺産分割協議の成立による甲名義から乙名義への相続登記、その後死亡した乙の相続分の指定による乙名義からX・Y名義への相続登記が順次なされたが、右遺産分割協議が無効であり、かつ、乙の他の相続人A・B・Cが乙の相続分の指定に対して遺留分減殺請求権を行使した場合、真正な登記名義の回復を原因としてX・YからA・B・Cに持分の一部移転登記をすることができる。
2 甲の共同相続人乙・X・Y・A・B・C間の遺産分割協議の成立による甲名義からX・Y名義への相続登記がされたが、右遺産分割協議が無効であり、かつ、その後死亡した乙がX・Yの相続分を各2分の1と指定したのに対して乙の他の相続人A・B・Cが遺留分減殺請求権を行使した場合、真正な登記名義の回復を原因としてX・YからA・B・Cに持分の一部移転登記をすることができる。
3 甲の共同相続人乙・X・Y・A・B・C間の遺産分割協議の成立による甲名義から乙名義への相続登記、その後死亡した乙の相続分の指定による乙名義からX・Y名義への相続登記が順次なされたが、右遺産分割協議が無効であり、かつ、乙の他の相続人A・B・Cが乙の相続分の指定に対して遺留分減殺請求権を行使した場合、X・Y名義からX・Y・A・B・C名義に所有権の更正登記をすることはできない。
4甲の共同相続人乙・X・Y・A・B・C間の遺産分割協議の成立による甲名義からX・Y名義への相続登記がされたが、右遺産分割協議が無効であり、かつ、その後死亡した乙がX・Yの相続分を各2分の1と指定したのに対して乙の他の相続人A・B・Cが遺留分減殺請求権を行使した場合、X・Y名義からX・Y・A・B・C名義に所有権の更正登記をすることはできない。
(平3.11.8、民三第5,667号民事局第三課長回答)
英国人所有の不動産に係る登記申請
本邦所在の不動産を所有していた英国人が死亡し、相続が開始したが、当該不動産の登記簿上の名義がその者の相続人とならない他の相続人名義となっている場合、死者である英国人名義にする真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転の登記の申請は受理される。
(昭57.3.11、民三第1,952号民事局第三課長回答)
字有地の所有権移転登記手続
「字」名義で所有権保存登記がなされている土地について、当該「字」に対し、「真正な登記名義の回復」を原因とする所有権移転登記請求が認容された場合には、右判決により当該移転登記をすることができる。
(昭55.8.11、民三第4,926号民事局第三課長回答)
判決により甲名義の相続登記を乙名義に変更する場合の手続
1「甲は乙に対し、甲名義でなされた相続を原因とする所有権移転登記を抹消したうえ、乙名義で同一の相続を原因とする所有権移転登記手続をせよ。」との判決を得た場合、甲名義の相続登記の抹消は、甲に対して右の抹消登記手続を命ずる判決により乙が単独で申請することができる。ただし、乙名義の相続登記は、申請書に相続を証する書面を添付して、乙が単独で申請すべきもので、甲又は相続放棄をした他の相続人である丙丁は、登記義務者とはならない。
2「甲は乙に対し、甲名義でなされた相続登記を乙名義に更正せよ。」との判決により、甲から乙名義に更正登記をすることはできない。
3「甲は乙に対し、所有権移転登記手続をせよ。」との判決を得た場合は、判決理由中において乙が相続により取得したのを誤って甲名義で所有権移転の登記がされたものであることが明らかであるときは、登記義務者を甲のみとし、登記原因を「真正な登記名義の回復」として、判決による乙の単独申請により甲から乙への所有権移転の登記をすることができる。
(昭53.3.15、民三第1,524号民事局第三課長依命回答)
登録免許税の徴収の要否について
買収無効を前提に「真正な登記名義の回復」を登記原因としてする国から個人への所有権移転の登記には、登録免許税法第4条の規定の適用はない。
(昭48.1.8、民三第239号民事局第三課長電報回答)
予告登記嘱託の受否
真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記請求の訴えに基づく予告登記の嘱託は、受理すべきではない。
(昭47.9.14、民事甲第3,736号民事局長回答)
停止条件付所有権についての「真正な登記名義の回復」による登記
「真正なる登記名義の回復」を登記原因として、仮登記された停止条件付所有権の移転の登記の申請は受理すべきでない。
(昭41.7.11、民事甲第1,850号民事局長回答)
「真正な登記名義の回復」による登記申請に農地移転の許可書の要否
農地について、「真正な登記名義の回復」を原因として、従前の所有権登記名義人でない者のための所有権移転の登記を申請するには、従前の所有権登記名義人の1名から、その者への所有権移転についての農地法の規定による知事の許可書の添付を要する。
(昭40.12.9、民事甲第3,435号民事局長通達)
農地につき「真正な登記名義の回復」と許可の要否
農地につき「真正な登記名義の回復」を原因とする移転登記をするには、前の名義人に回復する場合を除いてその申請書に農地法の許可書の添付を要する。
(昭40.9.24、民事甲第2,824号民事局長回答)
農地から非農地へ地目の変更の登記がされた土地につき「真正な登記名義の回復」を原因とする所有権の移転の登記の申請をする場合における農地法所定の許可書の提供の要否[登記研究714号]
「要旨」農地から非農地へ地目の変更の登記がされた土地につき「真正な登記名義の回復」を原因とする所有権の移転の登記を申請する場合、登記原因証明情報の内容から、非農地への地目の変更の登記原因の日付よりも前に所有権の移転があったことが明らかなときは、農地法所定の許可書の提供を要する。
「 問 」地目が農地から非農地へ地目の変更の登記がされた土地について、「真正な登記名義の回復」を原因とする所有権の移転の登記を申請する場合、登記原因証明情報の内容から、非農地への地目の変更の登記原因の日付よりも前に所有権の移転があったことが明らかなときは、農地法所定の許可書の提供が必要であると考えますが、いかがでしょうか。
「 答 」御意見のとおりと考えます。
「滞納処分に基づく差押」を代位原因とする「真正な登記名義の回復」による所有権の移転の登記の嘱託[登記研究701号]
「要旨」国税滞納者の所有する不動産を差し押さえるに当たり、その登記名義人が第三者になっており、また、当該第三者の所有権を目的とする抵当権が設定されている場合において、当該第三者の所有権の登記を抹消することにつき抵当権者の承諾を得ることができないときは、「滞納処分に基づく差押」を代位原因として「真正な登記名義の回復」による所有権の移転の登記の嘱託をすることができる。
「 問 」国税滞納者の所有する不動産を差し押さえるに当たり、その登記名義人が第三者になっており、また、当該第三者の所有権を目的とする抵当権が設定されている場合において、当該第三者の所有権の登記を抹消することにつき抵当権者の承諾を得ることができないときは、「滞納処分に基づく差押」を代位原因として「真正な登記名義の回復」による所有権の移転の登記の嘱託をすることができると考えますが、いかがでしょうか。
「 答 」御意見のとおりと考えます。
真正なる登記名義の回復を登記原因とする仮登記の可否[登記研究574号]
「要旨」真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転の仮登記(2条1号の仮登記)の申請はすることができるが、所有権移転請求権の仮登記及び停止条件付所有権移転の仮登記(2条2号の仮登記)の申請はすることができない。
「 問 」真正なる登記名義の回復を原因とする所有権の仮登記は許されないとする質疑応答[登記研究444号105頁)がありますが、これは、いわゆる2条2号の仮登記の申請をすることができないという趣旨であり、いわゆる2条1号の仮登記の申請をも否定したものではないと考えますがいかがでしょうか。
「 答 」御意見のとおりと考えます[登記研究423号126頁質疑応答参照)。
「真正な登記名義の回復」を原因とする所有権移転の登記の可否[登記研究556号]
「要旨」住宅・都市整備公団から売買を原因とする所有権移転登記を受けた者を登記義務者とした「真正な登記名義の回復」を原因とする所有権移転登記の申請をすることができる。
「 問 」住宅・都市整備公団から甲名義への売買を原因とする所有権移転登記がされている不動産について、「真正な登記名義の回復」を原因とする甲から乙への所有権移転登記の申請は受理されるものと考えますが、いかがでしょうか。
「 答 」御意見のとおりと考えます。
払下げを受けた宅地についての「真正な登記名義の回復」を登記原因とする所有権移転登記の可否[登記研究546号]
「要旨」官公署の払下げにより所有権移転の登記がされた宅地について、真正な登記名義の回復を登記原因とする所有権移転登記の申請をすることができる。
「 問 」農林水産省から払下げを受けて甲名義に所有権移転登記がされた宅地について、真正な登記名義の回復を登記原因とする甲から乙への所有権移転登記を申請することができると考えますが、いかがでしょうか。
「 答 」御意見のとおりと考えます。
農地から非農地へ地目変更された土地につき「真正な登記名義の回復」を原因とする所有権移転登記と農地法の許可[登記研究534号]
「要旨」農地から非農地へ地目変更された土地につき「真正な登記名義の回復」を原因とする所有権移転登記を申請する場合、農地法所定の許可書の添付は要しない。
「 問 」昭和62年に甲が相続し、その後平成3年に畑から雑種地に地目変更の登記がされている土地について、甲から乙に「真正な登記名義の回復」を原因とする所有権移転登記を申請する場合、農地法所定の許可書の添付は要しないものと考えますが、いかがでしょうか。
「 答 」御意見のとおりと考えます。
入会林野近代化法の規定に基づく所有権移転登記が経由されている不動産について真正な登記名義の回復による所有権移転登記の可否[登記研究533号]
「要旨」入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関する法律12条の規定に基づき甲への所有権移転登記が経由されている不動産について、甲から乙への「真正な登記名義の回復」を原因とする所有権移転登記申請は、受理できない。
「 問 」入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関する法律12条の規定により、甲名義に所有権移転の登記がなされている不動産につき、甲と乙(真正な所有者と称する者)の共同申請により、甲から乙への「真正な登記名義の回復」を原因とする所有権移転登記の申請があった場合、その申請は受理して差し支えないものと考えますが、いかがでしょうか。
「 答 」消極に解します。
真正な登記名義の回復と農地法3条の許可の要否[登記研究528号]
「要旨」A・B・Cへの共同相続の登記後、遺産分割を原因とするB・C持分のAへの全部移転登記が順次経由されている農地について、真正な登記名義の回復によりAからBへの所有権移転の登記を申請するときは、農地法3条の許可書の添付を要しない。
「 問 」農地について、相続人A・B・Cが相続登記をした後、遺産分割によりA単有名義となっている場合、真正な登記名義の回復を原因としてBへの移転登記を申請するには、農地法3条の許可書の添付が必要と考えますが、いかがでしょうか。
「 答 」添付を要しないものと考えます[登記研究449号88頁参照)。
租税特別措置法73条の適用の有無[登記研究518号]
「要旨」「真正な登記名義の回復」を原因とする所有権の移転登記については、租税特別措置法73条の登録免許税の税率の軽減の規定は適用されない。
「 問 」「真正な登記名義の回復」を原因とする所有権移転の登記は、家屋の取得を原因とするものではないので、租税特別措置法73条(住宅用家屋の所有権移転登記の税率の軽減)の規定の適用は受けられないものと考えますが、いかがでしょうか。
「 答 」御意見のとおりと考えます。
真正な登記名義の回復を原因とする移転登記の登記義務者[登記研究501号]
「要旨」甲から乙へ所有権移転の登記がされている不動産につき、「真正な登記名義の回復」を登記原因として丙に所有権一部移転の登記をする場合の登記義務者は、乙である。
「 問 」甲から乙へ所有権移転の登記がなされているが乙・丙の共有であった場合、「真正な登記名義の回復」を原因とする所有権一部移転の登記の登記義務者は、乙のみで足りるでしょうか。
「 答 」御意見のとおりと考えます。
「真正な登記名義の回復」による所有権移転登記の可否[登記研究463号]
「要旨」「競売による売却」を原因として甲名義に所有権移転登記がされている不動産につき、甲から乙への「真正な登記名義の回復」を原因とする所有権移転登記の申請は受理すべきでない。
「 問 」「競売による売却」を原因とする甲名義の所有権移転の登記がされている不動産につき、甲から乙への「真正な登記名義の回復」を原因とする所有権移転登記申請は、法49条4号により受理すべきでないと考えますがいかがでしょうか。
「 答 」御意見のとおりと考えます。
真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記の申請と農地法の許可の要否[登記研究449号]
「要旨」甲から乙・丙と順次所有権移転の登記のなされている農地について「真正なる登記名義の回復」を原因として甲のために所有権移転の登記を申請するには、甲丙間の所有権移転についての農地法3条の規定による知事の許可書の添付は要しない。
「 問 」農地において、甲が実体上の所有者であるのにかかわらず、登記簿上所有者が甲→乙→丙と移転している場合、丙から甲へ真正な登記名義の回復を原因とする登記申請を行う時も農地法3条の許可書の添付は要しないと考えますが、いかがでしょうか。
「 答 」御意見のとおりと考えます。
真正な登記名義の回復登記の更正・抹消登記[登記研究449号]
「要旨」A・B各々2分の1の持分を有する所有権移転登記の原因が「真正なる登記名義の回復」であっても、その持分をA=3分の2、B=3分の1とする所有権更正登記あるいは当該所有権移転登記を抹消する登記は、いずれも可能である。
「 問 」A・B各々2分の1の持分を有する所有権移転登記の原因が「真正なる登記名義の回復」である場合、その持分をA=3分の2、B=3分の1とする所有権更正登記あるいは当該所有権移転登記の抹消登記を申請した場合、いずれも受理できないと思いますが、いかがでしょうか。
「 答 」いずれも受理して差し支えないと考えます。
真正な登記名義の回復と農地法3条の許可の要否[登記研究432号]
「要旨」相続による所有権移転登記の登記名義人を真正な登記名義の回復により他の相続人に所有権移転登記を申請する場合においても、農地法3条の許可書の添付を要する。
「 問 」真正な登記名義の回復の登記について(昭和40、12、9民甲3435号]関連。
前所有権移転登記原因が年月日相続の場合(農地の所有権)、相続人Aが相続すべきところ相続人B名義となっているものを「A」と回復するためには添付書類として農地法3条の許可書が必要か。相続証明書だけでよいか。
「 答 」許可書の添付を要するものと考えます。
農地法に基づく許可の要否[登記研究429号]
「要旨」農地法5条の許可を得て所有権移転の登記をした後、地目が宅地に変更登記された土地につき、「真正な登記名義の回復」を原因として従前の所有者以外の者に所有権移転登記を申請する場合には、農地法による許可書の添付を要しない。
「 問 」農地法5条による許可書を添付して所有権移転登記をし、その後、地目を宅地とする地目変更登記がなされ、後日、「真正な登記名義の回復」を登記原因として、従前の所有者でない者のために所有権移転登記を申請する場合、農地法による許可書の添付を要しないと思いますが、いかがでしょうか。
「 答 」御意見のとおりと考えます。
真正な登記名義の回復を登記原因とする仮登記の可否[登記研究423号]
「要旨」真正な登記名義の回復を登記原因とする所有権移転の仮登記は受理できるが、所有権移転の請求権の仮登記及び停止条件付所有権移転の仮登記は受理できない。
「 問 」真正な登記名義の回復を原因として所有権の仮登記及び請求権が仮登記停止条件付仮登記は受理できるでしょうか。
「 答 」所問の場合、所有権移転の仮登記の場合のみ受理できるものと考えます。
租税特別措置法74条の2の適用の有無[登記研究422号]
「要旨」「真正な登記名義の回復」を原因とする既存住宅の所有権の移転登記については、租税特別措置法74条の2の登録免許税の税率の軽減は適用されない。
「 問 」租税特別措置法74条の2の既存住宅の所有権の移転登記の規定は、登記原因が「真正な登記名義の回復」であっても適用がありますか。
適用があるとした場合、取得後1年以内の登記の起算日はいつからでしょうか。
「 答 」前段消極に解します。
後段前段により御了承ください。
抵当権の更正登記の可否[登記研究420号]
「要旨」B・Cが共有で取得した不動産を誤ってB単独名義に所有権移転の登記を完了し、抵当権設定の登記もされている場合に、その後、BからCへの所有権一部移転の登記がされB・C共有となった場合には、当該抵当権をB持分のみの抵当権に更正することができる。
「 問 」ある不動産をAからB・Cが共有で買受けたものを誤ってBの単独名義に所有権移転登記をしてしまいました。その後、Dを抵当権者とする抵当権設定の登記がされ、次いで真正な登記名義の回復を原因とする所有権一部移転の登記によりB・C共有となっています。この場合、当該抵当権を錯誤を原因としてB持分の抵当権とする更正登記は可能でしょうか。
「 答 」所問の場合、可能と考えます。
真正な登記名義の回復による所有権一部移転登記の可否[登記研究405号]
「要旨」甲、乙共有の建物について、甲名義の所有権保存登記がされているとき、「真正な登記名義の回復」を登記原因として所有権一部移転の登記ができる。この場合、登記上利害の関係を有する第三者の承諾は不要である。なお、更正登記によることも可能であるが、この場合には利害の関係を有する第三者の承諾が必要である。
「 問 」甲乙共有の建物について、甲名義の所有権保存登記がされているとき、「真正な登記名義の回復」を登記原因として、所有権一部移転の登記は、受理されるでしょうか。また、登記上利害の関係を有する第三者が存する場合はいかがでしょうか。更正登記によるべきではないかとも思いますがいかがでしょうか。
「 答 」所問の所有権一部移転の登記は、登記上利害関係を有する第三者が存する場合にも、その承諾を要することなく、受理されるものと考えます。なお、更正登記によることも可能ですが、この場合には、利害の関係を有する第三者の承諾が必要です。
「真正な登記名義の回復」を原因とする所有権移転登記の申請と農地法3条の規定による許可[登記研究404号]
「要旨」甲から乙に所有権移転の登記のされている農地について「真正な登記名義の回復」を原因として丙のために所有権移転の登記を申請するに際し、乙丙間の所有権移転についての農地法3条の規定による許可書(権利移転の内容は、真正な登記名義の回復とある。)を添付しても、その申請は却下される。
「 問 」甲から乙に所有権移転の登記がされている農地について「真正な登記名義の回復」を原因として丙のために所有権移転の登記の申請があり、その申請書には、乙丙間の所有権移転についての農地法3条の規定による許可書(権利移転の内容は、真正な登記名義の回復とされている。)が添付されているが、「真正な登記名義の回復」は農地法上の権利変動の原因とはなり得ないものと思われますので、当該申請は、方式不適合として却下すべきものと考えますが、いかがでしょうか(昭和40、12、9民事甲3435号回答参照)。
「 答 」御意見のとおりと考えます。
農地についての「真正な登記名義の回復」を原因とする所有権移転登記に添付する農地法による許可書[登記研究385号]
「要旨」甲から乙へ所有権の移転登記がなされた農地につき「真正な登記名義の回復」を原因とする丙のための所有権移転登記を申請する際に添付する農地法所定の許可書は、甲と丙との間の所有権移転についてのものであっても差し支えない。
「 問 」甲から乙へ所有権の移転登記がなされた農地につき、「真正な登記名義の回復」を原因とする丙のための所有権移転登記を申請する場合には、登記研究380号80頁質疑応答〔5670〕では、当事者間の農地法による許可でも差し支えないとありますが、登記上の前所有者甲と丙との間の所有権移転についての農地法の許可があった場合には、当該許可証を添付することで差し支えないものと考えますが、いかがでしょうか。
「 答 」御意見のとおりと考えます。
判決に登記原因となるべき事項の記載がない場合の登記原因証書[登記研究380号]
「要旨」所有権移転を命ずる判決の主文及び理由の記載中に登記原因となるべきものがない場合の登記原因は、「真正な登記名義の回復」として差し支えないが、右判決正本は登記原因証書となる。
「 問 」所有権移転を命ずる判決の主文及び理由中に登記原因の記載がないときは、登記原因を「真正な登記名義の回復」として差し支えないものと考えるが、この場合、右の判決正本は登記原因証書とはならないと考えるがいかがか。
「 答 」登記原因を「判決」とせずに「真正な登記名義の回復」としたとしても、判決による登記であることにかわりはないので、判決正本は登記原因証書となるものと考えます。
真正な登記名義の回復による共有持分一部移転登記[登記研究374号]
「要旨」真正な登記名義の回復を原因として、共有者の1人がその持分を共有者以外の者に一部移転する登記は可能である。
「 問 」登記簿上各2分の1の持分を有する共有者A・BのうちAの持分について、Cのために真正なる登記名義の回復を登記原因として、その持分の一部移転の登記申請は可能でしょうか。
「 答 」可能だと考えます。
所有権移転登記と商法265条の適用の有無[登記研究362号]
「要旨」会社の代表取締役個人名義の不動産を当該会社に登記原因を「贈与」、「寄付」、「真正な登記名義の回復」として所有権移転登記を申請する場合には、商法265条の適用はない。
「 問 」A株式会社の代表取締役甲名義の不動産をA株式会社に登記原因を「贈与」、「寄付」又は「真正な登記名義の回復」として所有権移転登記を申請するに当たって、商法265条の適用があるでしょうか。
「 答 」適用はないものと考えます。
登記原因の更正の可否[登記研究362号]
「要旨」「売買」を登記原因とする所有権移転登記の登記原因を「真正な登記名義の回復」に更正することはできる。
「 問 」甲から乙(原因売買)、乙から丙(原因贈与)への所有権移転登記がなされている事案で、乙から丙への所有権移転登記の登記原因を「真正な登記名義の回復」と更正することができるか。
「 答 」できるものと考えます。
真正な登記名義の回復と利益相反行為[登記研究244号]
「要旨」未成年者名義の不動産を、「真正な登記名義の回復」を原因として親権者に所有権移転をする行為は、利益相反行為に該当しない。
「 問 」未成年者名義の不動産を、「真正な登記名義の回復」を原因として、親権者に所有権を移転する行為は、利益相反行為に該当しますか。
「 答 」所問の場合は、利益相反行為に該当しないものと考えます。
仮装売買による所有権移転登記の抹消に代えてさらに移転登記をすることの可否[登記研究211号]
「要旨」仮装売買(虚偽表示)により甲から乙に所有権移転の登記がされた場合に甲が登記名義を回復するため、その登記の抹消に代えて、登記原因を「真正な登記名義の回復」として乙から甲への所有権移転の登記をすることができる。
「 問 」甲は、事情があってその所有名義の不動産を乙に仮装売買し、その所有権移転の登記がされましたが、乙が甲との約束に反して、その不動産について丙のために抵当権を設定し、その登記も了しました。その後乙が死亡しましたが、乙の相続人は、甲乙間の仮装売買を認め、甲から乙への所有権の移転の登記の抹消に協力しますが、丙がどうしてもその抹消についての承諾書をよこしません。丙は明らかに仮装売買の事情を知っていたので、承諾を求める訴訟を提起すれば勝訴の判決が得られると思いますが、時間がかかりますし、できるだけ早く甲の所有名義にしたいので、抹消の方法によらずに、乙から甲に所有権移転の登記をしたいと思います。このような登記は認められるでしょうか。また認められるとすれば、登記原因及びその日付をどのように記載すればよいでしょうか。
「 答 」所問の場合、登記原因を「真正な所有名義の回復」と記載して(その日付の記載は要しない。)、乙から甲への所有権の移転の登記をすることができるものと考えます。
真正な登記名義の回復を登記原因とする所有権移転登記の登録税[登記研究211号]
「要旨」所有権保存の登記の抹消に代え真正な所有者への所有権移転の登記をする場合の登録税は、登録税法2条1項2号の「無償名義ニ因ル所有権ノ取得」として納付すべきである。
「 問 」甲の所有名義で所有権保存の登記がなされたが、甲が所有者でなく、真実の所有者は乙である場合、登記原因を真正なる登記名義の回復として、甲から乙への所有権の移転の登記をすることができるものとされているようですが、その場合の登録税については、実質的には、甲の所有権の登記の抹消にほかならないのであり、また、実体上甲から乙に所有権が移転したものではないのでありますから、所有権移転の登記の登録税を納付する必要はなく、実質上抹消の登記の登録税として30円を納付すれば足りるものと考えますが、いかがでしょうか。
「 答 」所問の場合、貴見のように、実質的には甲の所有権保存の登記の抹消に代わるものではありますが、その登記の形式が所有権移転の登記である以上、やはり登録税法2条1項2号の規定により、「無償名義ニ因ル所有権ノ取得」の登記として、不動産価格の1000分の25の登録税を納付すべきものと考えます。