登記記録上存続期間が満了している地上権を敷地権とする区分建物の所有権の移転の登記の受否について
登記記録上存続期間が満了している地上権を敷地権とする区分建物の所有権移転登記は、その申請書及び添付書面からその区分建物の敷地権が消滅していることが明らかな場合を除き、することができる。登記記録上存続期間が満了している地上権は,併せて存続期間の変更の登記を促すことが望ましい。
登記記録上存続期間が満了している地上権を敷地権とする区分建物の所有権の移転の登記の受否について
照 会
登記記録上存続期間が満了している地上権の移転の登記については,受理することができず,実体上,当該地上権の存続期間が延長されている場合には,まず存続期間の変更の登記をした上で,当該地上権の移転の登記を申請すべきであるとされています(昭和35年5月18日付け民事甲第1132号民事局長通達。以下「昭和35年通達」という。)。
昭和35年通達では,建物の所有を目的とする地上権について,登記記録上の存続期間経過後,登記原因日付を期間経過後の日付として地上権の移転の登記の申請があった場合は,借地法(大正10年法律第49号)第17条第1項ただし書の規定により,登記官は当該地上権が消滅していることを形式上判断することができるので,平成16年法律第123号による改正前の不動産登記法(明治32年法律第24号)第49条第2号の規定(現在の不動産登記令(平成16年政令第379号)第20条第8号の規定)により却下すべきものとされています。
このことから,登記記録上存続期間が満了している地上権を敷地権とする区分建物については,一般に敷地利用権と区分建物とを分離して処分することができないため(不動産登記法(平成16年法律第123号)第44条第1項第9号,建物の区分所有等に関する法律(昭和37年法律第69号)第22条第1項本文),当該区分建物の所有権の移転の登記をすることができないとも考えられるところです。
しかしながら,借地借家法(平成3年法律第90号)第5条第2項において,借地権の存続期間が満了した後,借地権者が土地の使用を継続するときは,建物がある場合に限り,原則として,従前の契約を更新したものとみなされていることからすれば,区分建物については,当該区分建物の登記記録等が現に効力を有するものとして存在する以上,当該区分建物が現に存在することを前提にすべきであり,かつ,当該地上権について同項に定める更新がされていないと取り扱うことは相当ではなく,登記官は敷地権である地上権が消滅したと形式的に判断することはできないと考えられます。
昭和58年度法務局・地方法務局首席登記官会同における建物の区分所有に関する法律及び不動産登記法の一部を改正する法律(昭和 58年法律第51号)に係る登記事務の取扱いに関する質疑応答において,「存続期間が満了した地上権(賃借権)を敷地権として取り扱ってよいか。」との質疑に対して「差し支えない。ただし,変更登記を促すのが相当である。」との回答がされている趣旨も上記と同旨であると考えられます。
以上のことから,登記記録上存続期間が満了している地上権を敷地権とする区分建物の所有権の移転の登記が申請されたときは,当該登記の申請情報及び添付情報から当該区分建物の敷地権が消滅していることが明らかな場合を除き,当該登記をすることができるものと考えますが,いささか疑義がありますので,照会します。また,敷地権が賃借権であった場合も同様と考えられますので,併せて照会します。
回 答
いずれも貴見のとおり取り扱われて差し支えありません。
なお,登記記録上存続期間が満了している地上権については,併せて存続期間の変更の登記を促すことが望ましいものと考えます。